COP29と関連発表が、十全性の高いカーボン市場の拡大に向けた基盤を築く

エリック・クーパーシュトローム
マネージング・ディレクター
インパクト投資およびナチュラル・クライメート・ソリューション

バクーで開催された国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)やその前後で行われた意思決定により、民間資本に支えられたカーボン市場が、気候変動の抑制に向けたグローバルな目標を実現するために重要な役割を果たすことが再確認されました。

2024年末に、カーボン市場に重大な影響を与える規制と自主的枠組みの整備に大きな進展がありました。国際航空会社の炭素排出量削減を促進する排出削減基準から、国およびグローバルレベルのコンプライアンス市場やボランタリー市場での品質基準まで、グローバルなカーボン市場が拡大するための基盤が加速的に構築されています。世界中の科学者が、気候変動に関する現状の取り組みは地球温暖化の悪影響を回避するのに不十分だと警鐘を鳴らし続けており、持続可能なネットゼロの未来を目指す移行手段として迅速な排出削減とカーボン市場の拡大を進めることに一刻の猶予もありません。

ブラジルが炭素排出の国内コンプライアンス市場を承認

ブラジル連邦議会は2024年11月半ばに国内のコンプライアンス市場を承認しました。炭素排出量の多い事業者には排出制限が課され、規制要件を満たすために同市場でカーボン・クレジットの取引を行うことが可能となります。続いてブラジルのルラ大統領は、同年12月中旬の市場の発足を承認しました。EU、中国、オーストラリア、ニュージーランド、カリフォルニア州、ワシントン州など、温室効果ガス排出規制の手段として、また貴重な追加資金調達源としてカーボン市場を開設している州、国、地域は増加しており、2025年のCOP30開催国であるブラジルもそこに加わることになります。ブラジルが予定しているコンプライアンス市場は、同国内の膨大な自然資本と極めて重要な生態系を考えると、特に重要です。

IC-VCMが新たなREDD+方法論を承認

Integrity Council for the Voluntary Carbon Market(IC-VCM:ボランタリー・カーボン市場十全性評議会)は、コアカーボン原則(CCP)に従って、森林破壊と森林劣化による排出の削減(REDD+)を目指す3つの方法論を承認しました。承認された方法論はVerraのVM0048とJurisdictional and Nested REDD+ Framework、およびArchitecture for REDD+ Transactions(ART)です。IC-VCMの決定は、プロジェクトのベースラインや森林への脅威の根拠など、REDD+プロジェクトの十全性に対してのメディアからの批判が続いていたことを受けて下されたものです。こうした批判は、ボランタリー市場全体の需要や価格にマイナスの影響を与えていました。CCPに基づいて承認された方法論は、ベースラインの十全性を高めるために地域のデータや遠隔計測したデータが取り入れられており、重要な森林保護措置とボランタリー市場全体に対する信頼性を高め、民間資金の支援を拡大する可能性があります。

IC-VCMは2024年12月中旬に、コアカーボン原則に照らし合わせてVerraのVM0047の植林・森林再生・植生回復プロトコルを承認しました。このような重要プロジェクトは劣化した土地を再生し、生物多様性、社会的利益、そして価値ある炭素隔離を促進することができ、IC-VCMの決定によってその質と十全性が示されたと言えます。2023年にこのIC-VCMの決定に先立って、CCPは特定の埋立ガスとオゾン層破壊物質に関する方法論を承認し、再生可能エネルギーの方法論を不承認とする決定を下しました。IC-VCMは2025年に、改良を加えた森林管理および植林・森林再生・植生回復プロトコルのレビューを完了することが予想されます。

第6条のルールが最終確定

2024年11月に相次いで発表されたカーボン市場のニュースに続き、国際民間航空機関(ICAO)は、国際航空の炭素排出に関する規制のメカニズムであるCarbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation(CORSIA:国際民間航空のためのカーボン・オフセットおよび削減スキーム)に基づき、追加の4つの基準を承認しました。Verra、Gold Standard、Climate Action Reserve、およびGlobal Carbon Councilが、これまでのAmerican Carbon RegistryやARTに加えて新たにCORSIAフェーズ1に全面承認されました。これにより、2027年からICAO加盟国において自主的遵守から義務的遵守へ移行する中で、将来のカーボン・クレジット需要の拡大を支えることが考えられます。クレジットが適格とされるためには、国内の気候目標との二重計上の回避に関する第6条の基準を遵守しなければなりません。

202411月の最後の出来事として、パリ協定の交渉から9年が経過し、カーボン・クレジットの国際的移転の管理を目的とする第6条のルールが制定されました。第6条のルール策定は、多くの問題で意見の対立が見られたCOPでの最も具体的な成果の1つかもしれません。このCOPでは、クリーン・エネルギー移行をサポートするための先進国から発展途上国への気候変動対策資金の移転、グローバル・ストックテイク計画、世界経済の脱化石燃料に関する声明など多岐にわたる問題で幅広く意見の対立が生じました。

第6条規定の明確化により、民間資金に支えられたカーボン市場が、気候変動の抑制に向けたグローバルの目標を推進する上で重要な役割を果たすという明確なメッセージが示されました。第6条4項は、カーボン・クレジット・プロジェクトの標準化や検証を含め、国連が一元的に管理するコンプライアンス・カーボン市場について規定し、これにより透明性、環境の十全性、厳格なモニタリング・報告・検証基準の遵守が保証されます。新たなグローバル市場は、当初1997年の京都議定書に基づいて創設されたクリーン開発メカニズムの後継となる予定です。このメカニズムは、十全性の高いカーボン市場の基盤の1つである追加性が不足したプロジェクトに関して厳しい批判にさらされてきました。数年内に新しい市場のルールと承認された基準が確定し、市場は稼働を開始します。

第6条2項は、Internationally Transferred Mitigation Outcomes(国際的に移転される緩和成果)の2国間および多国間取引に関するルールを定めています。これは、国がカーボン・クレジットの取引を承認し、ホスト国と受入国が決定する貢献(NDC、パリ協定に基づく国家気候目標)における排出量削減の二重計上を回避するための措置が含まれます。こうした国際的な取引により、各国は国際的な協力を通じて気候目標を達成することや、コストの低減、気候計画の効率的遂行を進めることができます。2024年のCOP開催前に、すでに多くの二国間協定が締結されており、こうした進展が国際的なカーボン取引のさらなる規模拡大を支えることが考えられます。

カーボン市場の規制と民間資本の今後の見通し

気候に関する自主的ルールから国内・国際レベルのルールまで、世界のカーボン市場を取り巻く規制環境は発展し続けています。グローバルな気候目標を支えるために多額の民間資本を集結するには、質と十全性の高いグローバル・カーボン市場を支える手法、プロトコル、メカニズムを明確化することが不可欠です。第6条とCORSIAは世界的なコンプライアンスのメカニズムに向けた重要な前進であり、コンプライアンス市場と重要なボランタリー市場は、十全性と質の基準の収斂が進むにつれて、完全に一致する一歩手前まで同質化すると予想されます。2024年が終わり、このような好ましい流れと、あらゆるカーボン市場を支えて強化する環境整備は翌年以降も続くと思われます。


レポート日本語版公開日:2025年8月12日

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