インドネシアの利下げ

インドネシア銀行(インドネシアの中央銀行、以下BI)は先月、7日物リバースレポ金利を0.25%引き下げ5.5%とし、市場にサプライズを与えました。この2ヵ月連続の利下げを通じて、不透明な世界経済環境において経済成長を押し上げたいというBIの姿勢が強調されました。本稿では、マニュライフ・アセット・マネジメント(インドネシア)のチーフ・エコノミスト兼インベストメント・ストラテジストが、アジア債券運用チームおよびアジア株式運用チームとともに、今回の予想外の利下げとそれによる市場への影響を考察します。 

インドネシアの8月の予想外の利下げ

マニュライフ・アセット・マネジメント(インドネシア)のチーフ・エコノミストによるマクロ経済見通し

8月22日、BIは予想外に指標金利を0.25%引き下げて5.5%とし、2017年9月以来となる2ヵ月連続の利下げに踏み切りました。ペリー・ワルジョ中央銀行総裁は、今回の利下げは世界経済が減速するなかで経済成長の押し上げを目指した予防的措置であると言及しました。今回の予想外の利下げは、インドネシアの経済ファンダメンタルズに対するBIの自信を反映したものであり、BIが同国の対外収支や経常収支の赤字に関して過度に懸念していないことを示しているものと考えます。

与信の増加が年初来の最低水準となったことから、金融機関の貸出を促進するため、6月初めにBIは預金準備率を引き下げました1。しかし、国債保有比率が6月初頭の17%前後から7月初頭の約22%に上昇した2ことが示すように、商業銀行は追加流動性を国債の購入に充てたため、この措置による効果はあまり見られませんでした。一方、8月の利下げという措置は、貸出の促進に対してより効果的であると考えます。 

BIは追加緩和を示唆しませんでしたが、総裁は金利の動きに敏感な民間投資の拡大を促進する必要性を強調しました。

8月の利下げを受けて、インドネシア・ルピアは米ドルに対してわずかに上昇しました3。この動きは、中国人民元の下落に影響を受け、通貨安となった韓国やインドとは対照的でした。FRB(米連邦準備制度理事会)の将来の政策はインドネシア・ルピアの先行きを決める重要な要因です。近いうちに、FRBが更なる利下げを示唆する可能性は高まっています。米ドルインデックス(DXY)は、市場ボラティリティからの安全避難先を求める動きに伴い、2年ぶりの高値をつけました。そのため、米ドルと人民元を含む他通貨との間でギャップが拡大しており、米国経済の競争力を悪化させている可能性があります。その結果、FRBがハト派姿勢を強め、それが米ドルインデックスを押し下げると同時に、インドネシア・ルピアを含む他の通貨を押し上げる材料になると思われます。

財政問題に関して言えば、インドネシアの2020年度国家予算は燃料価格を据え置きとし、2020年通期のインフレ目標を3.1%としています4。政府が補助金政策を通じて家計の消費を下支えしようとしている思惑は明らかです。インフレ・リスクが低い環境下、BIにはまだ利下げを行う余地が残されており、投資を通じた経済成長の押し上げが可能です。世界各地の中央銀行による同時金融緩和の動きも同国経済には追い風になると考えます。 

アジア債券運用チームの見通し

今回BIにより予想外の利下げが実施されましたが、これを受けた当チームのインドネシアに対する見通しの変更はなく、依然同国に対してはポジティブな見方をしております。むしろ、今回の動きは、BIは利下げサイクルの初期段階にある、という当チームの見方を裏付けるものです。引き続き年内に追加利下げが行われる可能性があると見ております。また、短期的にインドネシア・ルピアのポジションを大幅に引き上げることは想定していませんが、インドネシア・ルピアはリスク・リターンの観点からバランスが取れていると考えており、当面、ヘッジなしのポジションを維持する方針です。

アジア株式運用チームの見通し

利下げのタイミングは予想外だったものの、市場は今年後半の追加利下げを既に折り込んでおり、インドネシアの株式市場は依然として魅力な市場です。インドネシアは今年も5%のGDP成長を達成するペースで経済成長を続けており、経常収支の赤字は改善しています。資金調達コストの低下により、首都移転、ジャカルタ都市高速鉄道(MRT)の拡張、高速道路網などの大型インフラ整備という、ジョコ・ウィドド大統領の2期目の政策負担は軽減することから、インフラ・セクターを選好しています。また、中間層の拡大が家計支出の増加につながるため、消費セクターも魅力的と考えます。  

  1. インドネシア銀行、  2019年8月22日
  2. 財務省DJJPR、2019年7月 
  3. ブルームバーグ、2018年8月22-23日
  4. 財務省、Nota Keuangan Tahun Anggaran 2020
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