プラス金利の重要性

不透明感が高まるなかでアジア債券に投資すべき理由

米中間で継続する貿易戦争に関する不透明感が高まるなか、投資家がそれに伴う市場ボラティリティからの回避先として先進国の国債に殺到したため、先進国国債の利回りはマイナス圏でさらに低下しています1。これは、従来の安全逃避先でマイナス利回りの資産だけが投資家の避難可能な場所であることを示唆しているのでしょうか。本稿では、マニュライフ・インベストメント・マネジメントのアジア債券運用チームのポートフォリオ・マネジャー、ニール・カペッチが考察します。

前向きの見方を維持

7月末まで、市場は米中貿易交渉が建設的に進展すると予想していました。しかし、8月1日、トランプ政権が9月から中国製品の輸入に追加関税を課すと発表し、すべてが一日で変わり、事態は急激に悪化に転じました。その後の数日間で、人民元は心理的に重要な水準を割り込み、米財務省が中国を為替操作国に認定したと発表し、中国政府は750億米ドル相当の米国製品に対する関税を引き上げることにより対抗しました。一つだけ明らかなのは、両国間で目先合意に達する可能性が今や大きく低下していることです。

当然ながら、不透明感が高まり、市場は乱高下しました。リスクオフの心理が働き、株価は急落、債券利回りは大幅に低下しました。8月半ばまでに、世界全体でマイナス金利の債券は15兆米ドルを超えました1。米連邦準備制度理事会(FRB)が7月31日に踏み切った0.25%の利下げは、市場が織り込んでいた下げ幅と比べて緩やかと考えられました。

中央銀行の行動と景気刺激策への期待

「低金利がより長期にわたり続く」環境に戻っていることはほぼ間違いありません。FRBは米中の貿易戦争が激化する前の7月に既に利下げを行っており、G10諸国の中央銀行は当面金融緩和姿勢を維持すると当チームでは予想しています。アジア諸国の中央銀行も利下げを行っており、8月の第二週は、4ヵ国の中央銀行が同日中に大幅な利下げを発表しました。アジア地域の金融当局はインフレ率が低位に止まり利下げへの制約がないため、追加利下げを実施すると当チームでは考えています。アジアの多くの新興国では金利が相対的にまだ高いことから、金融緩和の余地があります。当チームでは、金融緩和の継続はアジア債券、特に質の高い国の現地通貨建て債券に追い風になると見ています。政府の景気刺激策への期待も、アジア債券全般のサポート材料になると思われます。実際に、この側面においては既に進展が見られます。タイは最近、100億米ドル規模の景気刺激策を実施する計画2を明らかにし、インドネシアは、景気減速への対策として財政支出の大幅増を計画していることが直近の予算から明らかになっています。シンガポールについても、状況が悪化すれば、景気刺激策が実施されるだろうとの観測が高まっています。その上、米中貿易戦争が始まって以来、既に数多くの経済政策を実施している中国も、追加政策を発表する可能性があります。

予想される中央銀行の行動と政府の景気刺激策の「波」は、世界経済に一定程度の下支えをもたらすと思われるものの、米中貿易戦争がどのように展開するか、また、それが具体的に経済成長をどのように損なうかは、まだ分かりません。投資家にとって気掛かりなのは、貿易戦争が激化するなかで人民元が大幅に下落するか否か、そして、それがアジア地域の経済にとって何を意味するか、という点です。そのため市場は、中国当局が8月5日に1米ドル=7元台の人民元安を容認する決定を下したことに困惑を示しました。

通貨リスク―複雑な問題

アジア債券運用チームでは、この問題を極めて注視しています。重要なのは、8月5日以降、中国人民銀行(中央銀行)が人民元の対米ドルレートを比較的安定した水準に保っている点で、今後も中央銀行の姿勢は変わらないと当チームでは考えています。人民元安が行き過ぎれば、資金流出に繋がり、中国が経済を近代化するために行ってきた多くの優れた措置が無に帰す可能性があるため、破壊的な人民元安となる可能性は低いでしょう。地政学的に不透明感が強い状況のなか、現時点では特定の通貨に偏らないバランスをとったアプローチが妥当であると考えており、中国債券については米ドル建て及び現地通貨建てのいずれも選好していません。

意義のあるプラス・リターンの追求

当チームでは、世界的に不安定な環境のなかでも、アジア債券の魅力は高いと考えています。それは、アジア地域の強固な経済ファンダメンタルズと、グローバル・ポートフォリオに分散効果をもたらすことが可能、というアジア債券の重要な特性によるものです。また、アジア債券が引き続きプラス金利をもたらしている点は、先進国の国債利回りがマイナス圏でさらに低下しているなかで、非常に重要なポイントです。金融緩和政策の強化と追加景気刺激策が相まって、アジア債券を強力に後押しする環境が生じると考えられます。世界のマクロ経済環境が不安定であっても、それは意義のあるプラス・リターンの追求を諦める必要があることを意味するものではありません。むしろ、プラス金利の保有を継続することが一段と重要になると当チームでは考えています。

  1. ブルームバーグ、2019年8月7日現在
  2. https://www.straitstimes.com/business/economy/thailand-to-unveil-stimulus-package-as-us-china-trade-war-hurts-growth
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