中国社債: 不動産セクターの見通し

フィオナ・チャン
グローバル・エマージング債券 リサーチ・ヘッド

ジュディ・クオック
中国債券 リサーチ・ヘッド

9月22日、中国の不動産開発企業の中国恒大集団(以下、「恒大」)は、オンショア債券の保有者と交渉を行い、予定どおりの利払いに応じることで合意したと発表しました1。その一方、9月23日を期限とする米ドル建て債券の利払いはまだ履行されていません2。総じて、不動産開発セクターの流動性状況は悪化しつつあることから、同セクターは今後も多くの課題に直面すると予想されます。本稿では、グローバル‧エマージング債券リサーチ‧ヘッドのフィオナ‧チャンと、中国債券リサーチ‧ヘッドのジュディ・クオックが、足もとの市場のボラティリティが不動産セクターの債券に及ぼす影響を探ります。両者は、同セクターおよびハイイールド債市場全体の長期的な投資機会を見極めるためには、入念なリサーチと巧みな銘柄選択が必要であることを強調しています。

このイベントの先にあるもの: 不動産セクターへの影響

恒大は中国国内で大規模に事業を展開している不動産開発企業であり、(売上高で見た)同社の規模は国内第2位となっています3。同社はオンショア(人民元建て)およびオフショア(米ドル建て)債券の両方を発行しています。同社は過去数ヶ月にわたり流動性状況が悪化する中で、先日予定されていた銀行に対する利払いを行うことができず、本稿の執筆時点でもデフォルト・リスクに直面しています4

同社の今後については今も不透明感が漂うものの、(足もとにおける同社社債の価格水準から判断する限り)市場はデフォルトを基本シナリオと見ているように思われます。したがって、主に問題となっているのはデフォルトのプロセスが秩序あるものになるかどうかという点です。そのため、デフォルトの様相は中国不動産セクターの見通しを左右する重要な要因になると予想され、その実態は今後明らかになっていくでしょう。

短期:
不動産開発企業は、全体的に流動性がひっ迫した状況が続くと見られます。銀行が既存融資を回収するとは思われないものの、現在の状況では、追加融資を行う可能性は低いでしょう。加えて、オンショア市場でもオフショア市場でも、不動産開発企業が債券を新規発行することは困難になる可能性があります。

中期:
中期的には、同社の経営問題に焦点が当てられることで、デフォルトの様相が重要になってくると思われます。秩序あるデフォルトが行われた場合、サプライチェーンの混乱は最小限に抑えられる可能性があります。無秩序なデフォルトが行われるシナリオでは、流動性の低下がサプライチェーンにも波及する可能性があります。その場合、川上のサプライヤーの資金繰りが悪化し、不動産開発業者によるプロジェクトの遂行が一段と困難になるおそれがあります。

どちらのシナリオが現実になるにせよ、その間、財務力の強い不動産開発企業が財務力で劣る同業他社から開発プロジェクトを取得することで、業界再編が加速し、二極化が進むことが予想されます。

長期:
長期的には、不動産開発セクターのレバレッジは引き続き縮小傾向をたどると予想され、そのことは良い点の1つに挙げられるでしょう。中国政府は、2020年8月に「3つのレッドライン5」政策を発表して以来、同セクターの債務水準の引き下げを積極的に推進してきました。過渡期は大きな変動と痛みを伴う可能性が高いものの、同業界は最終的に問題を乗り越え、力強さを増し、持続可能な成長局面を迎えると思われます。不動産開発業者の債務水準は低下し、キャッシュフローはより安定化し、事業モデルはより持続可能なものになるでしょう。

より広範囲への影響:システミック・リスクの抑制と社会的安定性の維持が、依然として政策上の最優先課題

全般として、デフォルト・シナリオは、影響を受ける金融機関や債券保有者、および経済全体にとって対処可能なものであると考えています。

中国政府はこれまでも、包商銀行の破綻や海航集団(HNA)の組織再編を含め、社会の注目が集まる多くの複雑な金融問題に対処してきました6。さらに、影響を受ける銀行融資と貸付信託の額はそれほど多くなく7、融資銀行(特に国有銀行)の多くは十分な自己資本を備えています。例えば中国人民銀行(中央銀行)は、銀行に対する包括的な年次ストレス・テストを実施しており、最近では銀行の不動産開発企業に対する個別のエクスポージャーについてもテストを行っています8

住宅の施主への物件引き渡しに混乱が生じるか、またはサプライチェーンに問題が生じて地方レベルで失業率が上昇した場合は、二次的な影響が生じる可能性があると考えています。とは言え、中国政府はシステミック‧リスクを抑制し、社会的安定性を維持する方針を明確にしていることから、そのような状況になった場合には、中国人民銀行が介入して短期的な流動性を注入する可能性が高いと見ています。

投資機会:同セクターおよびハイイールド債市場では、慎重な銘柄選択が引き続き鍵となる

先日の金融市場で見られたように、状況は流動的であり、ボラティリティは高水準で推移しています。ICEバンク・オブ・アメリカ・ハイイールド・エマージング社債プラス中国発行体指数によれば、2021年9月22日現在の中国国債に対するクレジット・スプレッドは1,581ベーシスポイント(bps)と、市場が同社のデフォルトの可能性を意識した2021年7月30日現在の1,436 bpsよりも拡大しています9

このような不透明な環境の中で、中国の不動産セクターは、ファンダメンタルズの面でも、マーケットの面でも年内を通じて不安定な状態が続くと思われます。したがって、慎重な銘柄選択と投資のタイミングがアウトパフォームの鍵となるでしょう。

マニュライフ・インベストメント・マネジメントは引き続き、銘柄選択およびレビュー・プロセスの一環として、幅広い財務指標に照らして債券銘柄のリサーチを行っています。流動性懸念がデフォルトの主要要因であることを踏まえ、先日、不動産開発企業の流動性水準およびキャッシュフロー比率について、掘り下げた分析を行いました。

投資家が中国不動産セクターへの投資を検討する際には、上述の中期的な影響に注目しながら、不動産開発企業のファンダメンタルズを包括的に検討することが推奨されます。マニュライフ・インベストメント・マネジメントは全体として、十分な事業規模を持ち、市場の様々な局面を乗り越えることが可能な財務的余裕のある不動産開発企業を引き続き選好しています。そうした企業は、全国または主要な経済圏において土地を豊富に保有しており、当該市場の大手である傾向にあります。またマニュライフ・インベストメント・マネジメントは、オンショア市場とオフショア市場の両方を通じて多様な資金調達チャネルにアクセス可能な不動産開発企業を選好します。これは、不動産開発企業の流動性ポジションと長期的な成功に不可欠な点です。

まとめ:不動産はより大規模な構造改革計画の一部

全体として、投資家は、不動産セクターにおけるレバレッジ縮小などの変化を、中国政府が本質的な構造改革政策により重点的に取り組んでいることの一環と捉えるべきでしょう。

マニュライフ・インベストメント・マネジメントは過去数ヶ月にわたり、家計負担の軽減と労働者の賃金および待遇の改善を目的とした教育およびインターネット産業における大規模な政策変更について取り上げてきました。不動産業界の分析に関しても同じ視点を適用すべきであると思われます。同セクターは従来、レバレッジを通じた経済成長の牽引役として活用されてきましたが、中国政府はより持続可能で公正な不動産市場の実現を目指していると思われます。このことは、中国での長期的な投資機会を模索する投資家にとって好材料と言えるでしょう。

  1. 日経アジア、2021年9月22日。この合意は「清算機関を通さずに」債権者との交渉を通じて行われたため、合意の詳細はまだ明らかにされていません。
  2. 日経アジア、2021年9月24日。恒大は期限を迎えた社債の利払いができなかったものの、デフォルトと判断されるまでには30日間の猶予があります。
  3.  同業界は非常に細分化されているため、恒大が市場に占める割合は全体の約4%に過ぎません。フィッチ・レーティングス、2021年9月14日。
  4. ブルームバーグ、2021年9月22日。日経アジア、2021年9月24日
  5. 中国人民銀行および住宅都市農村建設部は、2020年8月に「3つのレッドライン」政策を発表しました。3つのレッドラインとは、1) 資産に対する負債の比率は70%を上限とすること(前受金を除く)、2) 資本に対する正味負債は100%を上限とすること、3) 短期負債に対する現金の比率を1倍以上とすることを定めたものです。対象の不動産開発企業がレッドラインのいずれかに抵触した場合、負債による資金調達が制限されることになります。
  6. “HNA Group to be broken into four independent units as Chinese conglomerate’s restructuring enters final stretch”、サウスチャイナ・モーニング・ポスト、2021年9月20日。
  7. J.P.モルガンの推定によれば、同社が中国全体の銀行融資および貸付信託に占める割合は、それぞれ0.15%と2.66%となっています。
  8. ロイター、2021年4月14日およびストレーツ・タイムズ、2021年6月9日。中国人民銀行は2009年にストレス・テストを開始し、徐々にその対象を広げ、2020年のわずか1,550行から2021年には4,024行にまで拡大しています。
  9. ブルームバーグ、2021年9月22日現在。

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