複雑さの中で探る明確な見通し:不透明なマクロ経済を乗り越えるグローバル債券の3つのアイデア

クリストファー・チャップマン
グローバル・マルチセクター債券チーム共同ヘッド
シニア・ポートフォリオ・マネージャー

債券市場は、以前は主に金融サイクルと予測可能な財政状況によって形成されていましたが、現在はより複雑な世界を反映しています。本稿では、グローバル・マルチセクター債券チーム共同ヘッドであるクリストファー・チャップマン(CFA)が、投資家が足元の不透明な環境を理解し、規律や柔軟性、グローバルな視点を持って対応を検討するための3つの中核的テーマを解説します。

マクロ経済のサイクルは今、これまでの現代社会であまりなかったペースで進行しています。米国の通商政策の変化をはじめとして2025年に起きた政策の転換と、脱グローバル化に向けた大きな動きを例に取りましょう。関連指標を踏まえて発表される財政政策に反応して市場心理が急激に変化することがありましたが、市場の当初の反応は往々にして実際の経済的影響よりも感情を反映したものに過ぎないことが、その後明らかになりました。

この例は、より深層にある変化も浮き彫りにしています。マクロ変数の数が増加しつつあるだけでなく、変数同士の相互作用がより複雑さを増しているのです。関税の発表によってインフレ期待と報復リスクが高まり、債券市場は全年限で調整が入り、世界の債券投資の背景は複雑化しました。

それと同時に、世界各国の政策の違いがますます決定的要因となりつつあり、各国の財政面での優先順位や産業戦略、クレジット・サイクルの違いが拡大しています。インフレが後退しつつあり、関税の影響が薄れていくと予想される中で、中立金利に向けた各国の道のりは整然としているものの一様ではなく、各通貨のパフォーマンスの差は広がると見られます。その結果、外貨へのエクスポージャーは、グローバル債券投資に伴う単なる副産物ではなく、慎重なヘッジと通貨選択を行った上で意図的に獲得するリターンとリスクの源泉となる可能性があります。

中立金利に向けた各国中央銀行の道のりはまちまち

出所:ブルームバーグ、各国中央銀行の政策金利に基づいて作成。2026年3月27日現在

互いに関係するこれらの要因は、債券を取り巻く環境を塗り替え、資金配分を一変させています。マクロ環境が急速に変化し、政策の違いが拡大していることを考慮すれば、物事を落ち着いて解釈することと、ノイズに過剰反応することなく機会を捉える準備をしておくことが必要です。それと同時に、地政学的緊張の高まりにより、特にエネルギー市場とインフレ期待を通じてボラティリティが高まる可能性もあります。資金配分の担当者が足元の環境で確信度の高い見通しを得るためには、これらの要因の相互作用を理解した上で、バランスと世界的な視野を維持しながら複雑さを乗り越えられるようにポートフォリオを構築する必要があります。

 

マクロから読み解く市場:2026年の投資アイデア

このようなマクロ経済の諸要因が展開する中、今後1年間を乗り切るための明確なポートフォリオのアイデアが3つあります。

1) タイトなクレジット・スプレッド:銘柄を厳選することの重要性

債券市場には潤沢な資金があり、多額の流動性が投資を待っている状況です。債券市場のうち、社債セグメントは引き続き旺盛な投資家需要に支えられているものの、足元のボラティリティによって、いくつかのセクターでクレジット・スプレッドが小幅に拡大しています。過去と比べればバリュエーションは今も比較的タイトな水準にあります。足元のボラティリティが高く、クレジット・スプレッドのバッファーが限定的であること、またマクロ経済の不透明感が高まった場合、発行体、産業セクター、質における乖離が拡大する可能性が改めて浮き彫りになっています。

クレジット・スプレッドがタイトなため、
ボラティリティに対するバッファーは小さい

出所:ブルームバーグ、2026年3月27日現在。OASはオプション調整後スプレッドを示します。

こうした背景から、ハイイールド社債へのアロケーションは引き続き重要な役割を担う可能性があるものの、ダウンサイドリスクの管理に重点を置く必要があります。厳選された投資適格債、特にファンダメンタルズが強固で資本構造が魅力的な発行体の投資適格債への投資機会は、より魅力的なリターンをもたらす可能性があります。重要なことは、より魅力的な参入機会が市場に生じた場合にエクスポージャーを拡大できるよう、柔軟性を維持することです。

2) 世界に目を向ける:米国以外の投資機会

多くの機関投資家にとって、厚みのある手慣れた米国債券市場を中心に投資することは依然として当然のことですが、政策や景気サイクルの違いを背景に、グローバル市場や他の先進国市場でも投資機会が拡大しつつあります。インフレ動向や財政面での優先順位、中央銀行の戦略の違いから、さまざまな地域とセクターにおいて相対的に魅力的な投資機会が幅広く生じています。例えばオーストラリアやニュージーランドなどの先進国市場は金融政策の方向性と利回りの動向が米国とは異なるため、魅力的な分散投資のメリットをもたらす可能性があります。

最近のパフォーマンスは、景気サイクルが米国とは異なる市場の投資機会がいかにリターンの押し上げ要因となりうるかを示しています。例えばエマージング市場のハードカレンシー建て投資適格ソブリン債は、2025年に利回りが低下し、スプレッドが約30ベーシスポイント(bps)縮小したことで、10.0%のリターンを上げました。先進国でもエマージング市場でも魅力的な利回りの機会がもたらされ、マクロ経済動向が米国とは異なる市場がある中で、米国への過剰なバイアスを維持することは、投資機会を狭めるリスクがあります。

足元の世界環境は、複数のセクターと通貨にわたる投資枠組みに適しており、機関投資家は、米国とは動向が異なる市場の投資機会を捉えることにより、リターンを高め、分散投資を行うことができます。

3)  通貨:適切な通貨ミックスを構築する

2025年の全面的な米ドル安が再び起きるかどうかはまったく不明ですが、地政学的緊張と、変化する世界的な資金の流れがリスク・センチメントに影響を及ぼす中で、米ドルは不安定に推移すると予想されます。こうした中、慎重な為替エクスポージャーの構築は米ドルベースの投資家のリターンを押し上げ、分散投資効果をもたらす可能性があります。2025年にはさまざまな通貨が対米ドルで押し上げられ、中でもスウェーデンクローナやユーロを含む先進国通貨は、欧州の財政見通しに対する投資家信頼感の改善が追い風となりました。またほぼ同じ時期に、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融緩和を主な要因として、新興国通貨も米ドルをアウトパフォームしました。例えばブラジルレアルは、金利および金融政策の違いにより、2025年に米ドルに対して29%近いトータルリターンを記録しました。投資家は、ファンダメンタルズから見て合理的なリターンが期待できる通貨のエクスポージャーを適切に管理することにより、米ドル建てのポジションを補完することができます。とは言え、ガバナンスとポジション規模の規律ある管理が為替アロケーションの枠組みにとって必須の要素であることに変わりはありません。

 

分断が進む世界に備えて底堅いポートフォリオを構築する

マクロ経済要因が刻々と変化し、各国の政策の違いが拡大する中、投資家は、より幅広い視野とより戦術的な考え方を持ってグローバル債券へのアプローチを検討する必要があります。質の高い厳選されたクレジットへのエクスポージャーや、地理的分散、および慎重な為替ポジションを組み合わせて投資機会を拡大することが、ポートフォリオの底堅さを維持し、いずれか単独の市場またはマクロ経済動向への過度の依存を避けることに役立ちます。

こうした中、投資家にとって、世界を視野に入れ、規律あるプロセスに従い、状況の変化に対応できる柔軟性を保つことが、絶えず変化する状況を乗り越えることに役立つと思われます。

リスクと手数料については、以下をご覧ください。
https://www.manulifeim.com/institutional/jp/ja/jp-risks-and-fees-guide

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