CIOインサイト―日本株式―インフレ、金利、投資:日本の新時代を乗り切る

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CIOのコリン・パーディが日本株式運用ヘッドのエドワード・リッチーと対談~足元の市場環境と見通し、ポートフォリオにおける主要テーマや投資戦略に関する見解をお伝えします。

インフレ、金利、投資:日本の新時代を乗り切る

今回の対談では、日本における経済構造の変化、コーポレートガバナンスの取り組み、政治的変革に関する見解を議論しています。日本の進化する市場ダイナミクスと中国との競争が、将来の投資戦略形成にどのように寄与するかを探ります。


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CIOのコリン・パーディが日本株式運用ヘッドのエドワード・リッチーと対談 インフレ、金利、投資:日本の新時代を乗り切る
トランスクリプト

コリン:エド、ようこそ。日本市場の見通し、リスク、そして機会について議論するには、まさにエキサイティングな時期ですね。どうぞよろしくお願いします。

エド:ありがとうございます。まさに日本株にとって非常に興味深い時期ですね。

コリン:素晴らしいですね。エド、日本から帰国したばかりとのことですが、まずは今回の訪問で得られた重要な知見について、ぜひ詳しく聞かせてくれますか?

エド:今回の訪問で特に強く感じたことの一つは、日本を訪れる外国人観光客の多さですね。もちろん日本人自身もそのことを強く認識しているはずです。そして、日本におけるオーバーツーリズム(過剰観光)について多くの議論がなされています。興味深いことに、外国人観光客は日本の物価を非常に安いと感じている一方で、日本人にとってはまったく逆の視点であるという点です。

コリン:観光と価格設定に関する見解については、我々海外にいる人間とは異なる認識・感覚があるようですね。可能であれば、その点についてもう少し詳しく話してもらえますか?

エド:日本においては、過去5年間にわたり通貨安が続いており、同時に少なくとも3年間は強いインフレ環境でした。そのため、外国人観光客にとっては物価が非常に安く感じられる一方で、日本国民は過去30年間ほとんど経験したことのないインフレの痛みを実際に感じています。このことが両者の間に一定の緊張感を生んでいると言えるでしょう。

コリン:さて、政治的にも日本では与党の新党首に高市早苗氏が選出され、初の女性総理が誕生し、非常に歴史的な転換時期となっています。あなたの視点から見て、この政局の動向は経済や市場環境にどのような変化を与えると予想していますか?

エド:日本初の女性首相の誕生は確かに日本にとって非常にエキサイティングな出来事です。明らかに、高市氏は経済拡張・成長志向主義者です。金融・財政の拡張政策を信奉しています。また、防衛費の増額についても非常に積極的な姿勢を示しています。また彼女がすぐに導入したいと語っている政策の一つが、個人所得税におけるいわゆる「年収の壁(非課税枠)拡大」です。これは消費者心理と消費活動に非常に好影響を与えると考えられます。

コリン:では、市場について少しお話ししましょう。年初来において、日本株は米ドル建てでも円建てでも、米国株を上回るパフォーマンスを示しています。日本株式市場において、この要因の主な原動力は何だったのでしょう?

エド:日本経済は少なくとも過去3年間、持続的なインフレ環境が続いてます。同時に、コーポレートガバナンスの改善も見られます。まず、インフレ環境においては、企業が価格転嫁によって収益を拡大することが格段に容易になります。特に価格決定力を持つ企業は、コストアップを上回る価格引き上げが可能となるため、利益に対して非常にポジティブな影響を与えています。

コリン:わかりました。さて、コーポレートガバナンスについて話になりましたが、日本企業を題材に、我々はこの点について多くの議論を重ねてきました。なぜそれが株式市場にとってそれほど重要なのでしょうか?

エド:そうですね。特に日本企業の自己資本利益率(ROE)向上に焦点を当てた場合、コーポレートガバナンスにおける注目の多くは、過剰資本や遊休資本の活用にありました。企業は政策保有株(持ち合い株式)を大幅に解消し、貸借対照表上の現金を株主還元、より高収益なプロジェクトへの投資に充てる動きを始めています。 こうした動きがROE向上に効果を発揮し始めています。しかしながら、日本のROE水準は例えば米国市場と比べると依然として大きく劣後しており、改善の余地が非常に大きいと考えています。

コリン:では、日本銀行についてお伺いします。先ほど話したとおり、現在インフレ率は相応に高い水準ですが、政策金利はわずか0.5%です。これはなぜでしょうか。また、近い将来にさらなる利上げが行われると想定していますか?

エド:日本銀行の政策委員会メンバーの多くは、利上げに対してかなり慎重な姿勢を示していると言えるでしょう。これは、約30年にわたるデフレ環境の歴史と、日本が持続可能なインフレ環境へと移行できる段階に達したとまだ確信が持てないことが背景にあると思います。しかし、最近になって、ある政策委員会のメンバーから「日本はデフレ基調を脱し、インフレ環境へ移行する段階に達した」との見解が示され始めました。今後、政策委員会の過半数がこの見解に賛同するようになれば、政策金利は我々が「正常化金利水準」と呼ぶ、少なくとも1%以上へと上昇し始めるでしょう。

コリン:今後金利が上昇する方向にあると考えられる中で、金利上昇は日本の株式市場にとってどのような戦略的意味を持つのでしょうか?

エド:金融セクターや銀行にとっては明らかにプラスであるとともに、日本経済の持続的な強さの表れであるため、市場全体にとっても概ね好材料です。しかしながら、金利上昇が続く場合、為替レートに影響を与える可能性があり、円高が進むことで特に輸出企業を中心に海外収益に若干の押し下げ圧力が生じる懸念については注視しています。

コリン:最後に中国について触れないわけにはいきませんね。中国の競争という文脈で聞きたいのですが、日本の企業を見て、どの分野や産業が中国の競争によって脅威にさらされていると考えていますか?また、どの分野が日本で優位性を維持できると考えていますか?

エド:ご存知の通り、中国は多くの産業分野で非常に競争力を持ち始めており、特に汎用化学品や自動車分野、例えば電気自動車における強みなどが挙げられます。一方、日本は競争優位性を持つ分野、特にニッチ市場において注力することができています。例えば半導体分野における部品供給網は依然として日本企業は非常に高い世界市場シェアを有しています。そしてご存知のように、日本には自国製品の海外向け保守・サービス網を構築してきた長い実績があります。これは長い時間をかけて築いてきたものであり、また、容易に再現できるものではありません。

コリン:なるほど。日本に関してはお話ししたいことが山ほどありますが、残念ながら時間がなくなってしまいました。本日は素晴らしい見解、また最近の日本での経験や市場見通しに関する議論をありがとうございました。

エド:ありがとうございます。

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