2024年の森林投資のパフォーマンスは2023年と同等か上回る見通し

メアリー・エレン・アロノー
ディレクター、森林経済担当

2024年の米国のプライベート森林投資は、2023年のパフォーマンスを上回る見込みです。現在、鑑定評価や市場取引に基づく年度報告を待っている段階ですが、この数字から2025年の動向が見えてきます。

2024年第3四半期までの米国の森林のパフォーマンスからは、森林資産価値の大きな上昇がトータルリターンを押し上げたことが分かります。当期間のトータルリターンは、前年同期を55ベーシスポイント(bps)上回る5.41%となりました1。キャピタルリターンが当期間のパフォーマンスを牽引しており(3.96%)、2023年の同期間(2.93%)を上回っています。

2024年1-9月期の米国の森林のパフォーマンスは、2023年を上回る

出所:NCREIF Timberland Property Index、2024年9月末時点

年間の森林取引が活発であったため、鑑定評価の基準となる比較可能な売買データは豊富に提供されました。しかし、木材製品の需要の低下が続いたことから、2024年の森林収益は圧縮され、結果的に米国内の大半の地域で生産縮小が進み、木材の伐採量と価格に下押し圧力がかかりました。当期間のリターンを見る限り、森林マネージャーは、今後の市場の回復を見据えて伐採活動を柔軟に変更することで、木材、板材、パルプ、紙などの森林製品に対する需要の低迷に対処しています。

今後発表される2024年通年のパフォーマンスが得られるまでの間は、2023年の米国における森林投資のパフォーマンスを主要地域における過去の実績に照らして振り返ることで、有益な背景情報を得ることができます。

2023年のトータルリターンは森林の資産価値が継続的に力強く上昇したことが牽引

米国不動産投資受託者協会(NCREIF)は、機関投資家が保有する米国森林資産の物件単位のパフォーマンスを収集し、その集計結果をTimberland Property Index(TPI)として報告しています1。2023年は、TPIのトータルリターンが9.45%となり、過去10年の年間平均リターン(5.80%)と過去20年の年間平均リターン(7.20%)を上回りました。ただし、好調だった2022年のトータルリターンと比べると緩やかに低下(345bpsの低下)しています1

2023年の米国の森林投資のパフォーマンスは9.45%

出所:NCREIF、2023年12月末時点

2023年のトータルリターンは、森林資産の価値上昇の力強さが継続したことに牽引されました。また、森林投資に対する関心が全体的に高かったことで、鑑定時に参考となる比較可能な売買データが豊富に提供されました。一方、2023年の森林のインカムリターンは低下しましたが、これは、住宅の建設や改修、リフォーム(米国の製材用木材の主要な需要源)に対する支出の減少が続いたことから、木材や板材の価格が歴史的低水準にまで下落したためです。この結果、米国各地域の高コストの製材業者は生産の縮小を余儀なくされ、製材工場の生産縮小が木材の伐採需要を押し下げ、木材価格も下落しました。

2023年のNCREIFのTPIには、米国各地443件の森林のパフォーマンス・データが反映され、その総面積は1,270万エーカー、総市場価値は265億米ドルでした。NCREIFでは、トータルリターンをネットオペレーティングインカム(EBITDDA2)とキャピタルゲイン(またはキャピタルロス)の2つの要素に分けています。2023年に米国の森林のキャピタルリターンは10年平均を上回りましたが、インカムリターンは10年平均を下回りました。2023年のプライベート森林資産のインカムリターンは2.6%となり、過去10年間の平均を30bps下回りました。NCREIF TPIのキャピタルリターンは、TPIに組み入れられるすべての資産に対して毎年実施される第三者機関による森林の鑑定評価に基づいて算出されています。2023年のキャピタルリターンは6.7%に達し、2022年の9.6%から287bps低下したものの、10年平均の2.9%を2倍以上上回りました1

NCREIFのレポートは、米国内の森林のパフォーマンスを、五大湖周辺、西部、南部、北東部の4つの地域に分けて示しています。TPIは南部の比重が特に高く、市場価値では指数全体の65%を占めています。南部の森林はパイン(松)のプランテーションが大部分を占め、松と広葉樹の混合林も含まれます。米国西部の森林は指数の資産価額の26%を占め、残りの9%は北東部(5%)と五大湖周辺(4%)にある高価値の広葉樹林や針葉樹・広葉樹の混合林です。

米国NCREIFのTPIでは西部と南部の森林資産が90%以上を占める
TPIの市場価値の地域別割合(%)

出所:NCREIF、2023年12月31日時点

南部と西部の森林の堅調なパフォーマンス

米国の主要4地域における2023年の年間トータルリターンは、北東部の約2.9%から南部の11%まで幅がありました1。西部の森林資産のパフォーマンスは7.7%、五大湖周辺は6.1%となっています1

TPIの市場価値のほぼ3分の2を占める南部では、プライベート森林投資の2023年のトータルリターンは11%と、2022年(13.4%)から240bps低下しましたが、この地域の過去10年の平均トータルリターンを500bps以上上回る水準でした。南部での2023年の森林のトータルリターンは、インカムリターンの3.0%とキャピタルリターンの7.8%で構成されています。2023年のインカムリターンは、この地域の過去10年間の平均インカムリターンを69bps上回り、2022年との比較でも8bps上回りました。2023年の南部のキャピタルリターンは2022年から243bps低下したものの、過去10年間の平均の3倍以上でした。

2023年の米国西部のプライベート森林投資のトータルリターンは7.65%と、この地域の過去10年の平均トータルリターンを上回りました。インカムリターンは1.90%と歴史的な低水準にとどまりました。これは、この地域の需給バランスが逼迫していたにもかかわらず、木材・板材生産者の需要減退により2023年は伐採が大きく減少したことが原因です。

2023年の森林のパフォーマンスは10年平均を上回った
森林の年間のEBITDDAとキャピタルリターン(地域別)

出所:NCREIF、2024年1月25日時点。EBITDDAは、利払い前、税引前、減価償却・減耗償却その他の償却前利益を示します。

TPI全体の10%に満たない五大湖周辺と北東部では、2023年のパフォーマンスは2022年と比較して低下しました。これはキャピタルリターンが低調だったことが主要因です。

米国各地域の森林の暦年パフォーマンス(2023年の2022年との比較)

出所:NCREIF Timberland Property Index、2023年12月末時点。EBITDDAは、利払い前、税引前、減価償却・減耗償却その他の償却前利益を示します。

レポート日本語版公開日:2025年8月20日
  1. NCREIF 2023年第4四半期Timberland Property Index(TPI)。Manulife Investment ManagementはNCREIF Timberland Property Indexの参加メンバーであり、参加運用会社にはすべての適格資産を報告する義務があります。本データを使用していることは、資産の売買の勧誘ではありません。
  2. EBITDDAは、利払い前、税引前、減価償却・減耗償却その他の償却前利益を示します。

リスクと手数料については、以下をご覧ください。
https://www.manulifeim.com/institutional/jp/ja/jp-risks-and-fees-guide

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