プライベート・エクイティ共同投資に求められるミクロの厳密さとマクロの視点

スコット・ガーフィールド
シニア・マネージング・ディレクター
プライベート・エクイティ&プライベート・クレジット

共同投資のオリジネーションを能動的に行うことはほとんどできません。共同投資プログラムは概して受動的であり、魅力的な取引に参加する機会が得られるかどうかは、プライベート・エクイティ・スポンサーとの関係に依存します。また、共同投資の機会に参加するか辞退するかを正しく決定することが極めて重要です。結局のところ、共同投資家がコミットすると、その後の成果はほぼ完全に企業の経営陣とプライベート・エクイティ・スポンサーの手に委ねられます。

共同投資戦略をうまく実行するというのは比較的明快ですが、成し遂げることは決して容易ではありません。直接投資には、ソーシングからエグジット(出口)計画、会社の戦略から価値創造戦略実行の全要素に至るまで、幅広いプライベート・エクイティ活動を伴いますが、共同投資に求められる要件はより限定的です。強固なソーシングと有効な投資先の選択が成功のカギです。

経験豊富な投資家が共同投資に求めるものは不変

投資家が共同投資を選択する場合の重要な基準は3つあります。

1) スポンサーと共同投資家との利益の一致、スポンサーの専門分野と投資先企業の事業内容との強い適合性。ディスカウントがなく、適正に価値評価された共同投資であっても、企業を次のレベルに押し上げるために必要とされる専門性とスキルを備えたスポンサーとともに実行されるならば、成功を収めることができます。

2) 一貫したフリー・キャッシュフロー、持続的な市場での地位、安定した利益成長など複数の価値創造要因とダウンサイドプロテクションを併せ持つ魅力的な企業特性

3) 異なるセクター、スポンサー、投資戦略、リスク・エクスポージャーに分散されたポートフォリオ

政策の不確実性は世界的に高く、米国で高まっている
米国と世界の経済政策不確実性指数

出所:経済政策不確実性指数、マクロボンド、マニュライフ・インベストメント・マネジメント、2022年9月12日

マクロ・テーマに基づくべき共同投資の判断

予測に基づく投資は賢明ではありませんが、現在の経済状況や地政学的状況、資本市場環境を理解することが投資先の選択を最適化する上で不可欠です。 幸いにも、データや経済に関する評価、コメント、意見は十分にあります。大手機関投資家は、自社のエコノミストと相談し、その見解を他の市場アナリストと比較し、ジェネラル・パートナー(GP)との対話をプライベート・エクイティ・ファンド・プログラムに統合することができます。多くの場合、進行中の投資案件から、市場環境に関するリアルタイムのデータが得られます。例えば、クレジット・スプレッド、借り入れ条件、レバレッジなどの変化は、複数の社内リソースや運用チーム(クレジットに特化したリソースやチームを含む)との対話を通じ、頻繁にアップデートされなければならない重要な検討事項です。この点について、幅広いシンジケート・ローン(BSL)とミドルマーケット・ローンの間で生じている乖離を例に挙げることができます。比較的安定したミドルマーケット・ダイレクトレンディングと比べてBSLの間で最近生じている混乱は、共同投資の引き受けに際しても考慮されており、レバレッジが低い中小企業、特に融資条件が依然として借り手に有利なレンディング構造を持つロウアー・ミドルマーケットの企業が共同投資において選好されています。他の多くのリミテッド・パートナー(LP)や共同投資家について推測しているように、成功する投資家は、大手プライベート・エクイティ運用会社が提供する評価や意見を幅広く取り入れる機会を享受して、あらゆる業種に投資しており、以下のようなトピックに関する運用会社の考察を各自の投資戦略やアプローチに活用しています。NASDAQは今四半期に2桁下落するか?フランシスコ・パートナーズ1やトーマ・ブラボー2はテクノロジー株投資についてどのように言っているか?GDPは2四半期にわたりマイナスか?アメリカン・インダストリアル・パートナーズ3やブルックフィールド4は、鉱工業セクターにおいてどのように対応しているか?

現在の経済状況や地政学的状況、資本市場環境を理解することが投資先の選択を最適化する上で不可欠です。

結局のところ、投資家は、合併・買収による統合、経営資源計画の実行、その他の価値創造戦略など、業務執行に関連し、性質上管理可能なリスクのみをとりつつ、顧客の集中、規制変更、コモディティ価格の変動に関連するリスクなど管理できないリスクを回避して、ポートフォリオの構築を目指すべきです。経済環境に関わりなく成長できるビジネス・モデルは常に魅力的で、今日ではさらに重要になっています。

経済環境に関わりなく成長できるビジネス・モデルは常に魅力的で、今日ではさらに重要になっています。

例えば、インサイト・グローバル5やアディソン・グループ6は、情報技術(IT)業務に大きく携わる人材派遣会社です。表面上、人材派遣は景気感応度が高いと思われますが、以前行ったインサイトへのメザニン投資では、IT関連の人材派遣が近年、構造的に変化しており、もはや景気感応度が高くないことを確認しました。世界金融危機やパンデミックの期間を通じたパフォーマンスおよび業界やこれらの企業に関して直接得た知識などの追加情報から、景気感応度は低下し、管理可能であることが明らかとなりました。

クレジット市場やセカンダリー市場、その他の付随市場が重要な手掛かりを提供

ダイレクトレンディング、メザニン、プライマリー、セカンダリーの各市場に横断的に投資している投資家は、プライベート・エクイティ共同投資において情報の優位性を生み出すことができます。これらの関連投資プログラムは、多くの場合、スポンサーの能力、セクターのリスクやトレンド、相対バリュエーションに関する重要な知見をもたらします。例えば、ジュニア・クレジット投資に関連してスポンサーとともにオブザーバーとして取締役会に出席する場合、投資を予定している共同投資家は、当該スポンサーのエンゲージメントの水準や価値創出能力について多くを学ぶことができます。そうした情報は、投資家が当該企業への次の共同投資機会を検討する際に直接役立ちます。さらに、複数のGPとの長期のリレーションを持つ投資家は、外的なイベントがビジネスに与え得る影響について、当該セクターへの過去または現在の投資事例が同種のイベントからどのような影響を受けたかを聞くことによって、理解を深めることができます。また、セカンダリー・ファンド、プライベート・クレジット・ファンド、プライマリー・ファンドに組み入れられている取引を広く網羅することによって、投資家はバリュエーション、相対的な成長率、利益率の持続可能性などの重要な問題に関する詳細な見方を養うことができます。

もはや投資先の株式が公開される場合に限定されることなく、共同投資家は今や、多くの場合、エグジットの決定に積極的に関与しなければなりません。

GP主導のセカンダリー取引が一般的なプライベート・エクイティのエグジット手段へと発展する中で、共同投資にも重要な変化が生じてきました。過去においては、ほとんどのエグジットが共同投資契約に織り込まれた強制売却権(ドラッグ・アロング)によって決められた一方、今や共同投資家は、多くの場合、「売却するか、それとも継続ファンドを通じて保有を継続するか」の決定を迫られます。この決定は、リミテッド・パートナー(LP)と共同投資家の両方を兼ねる投資家にとって珍しいことではありません。しかし、複数の市場に投資している投資家は、セカンダリー投資チームなどからの追加情報を活用することができます。もはや投資先の株式が公開される場合に限定されることなく、共同投資家は今や、多くの場合、エグジットの決定に積極的に関与しなければならず、多様な視点と複数の情報経路を活用して、適切な意思決定に役立てることができなければなりません。

GPの選択において目に見える優位性

共同投資家の多くは、景気循環の長さまたはそのピークや底の大きさを予測することには長けていませんが、優れた実績を有するGPを選択することには目に見える優位性を発揮することができます。価値ある共同投資の目的は、予想リターンがプラスに偏っている分散された底堅い投資ポートフォリオを構築することです。共同投資家がそうしたポートフォリオの構築に成功するならば、マクロ経済や市場環境がどのように発現するかに関わりなく、魅力的な投資リターンを獲得する可能性が高まります。

 

 

※本レポートのオリジナルは、バイアウト(2022年10月)7に掲載されたものです。

  1. https://www.franciscopartners.com/
  2. https://www.thomabravo.com/
  3. https://americanindustrial.com/
  4. https://www.brookfield.com/our-businesses/private-equity
  5. https://insightglobal.com/
  6. https://addisongroup.com/
  7. https://www.buyoutsinsider.com/manulife-co-investing-demands-micro-rigor-and-macro-perspective/

リスクと手数料については、以下をご覧ください。https://www.manulifeim.com/institutional/jp/ja/jp-risks-and-fees-guide

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世界的なパンデミックなどの公衆衛生危機は、市場のボラティリティの大幅な上昇、証券取引の停止等の原因となり、ポートフォリオのパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があります。例えば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界の経済活動に深刻な打撃を与えています。将来、発生する可能性のある公衆衛生危機、およびその他のエピデミックやパンデミックは、現時点では必ずしも予測可能ではない影響をグローバル経済に与える可能性があります。公衆衛生危機は、既存の政治的、社会的、経済的リスクを悪化させる恐れがあります。こうした事象はポートフォリオのパフォーマンスに悪影響を与え、投資に損失が生じる可能性があります。

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