今の時代に適合するプライベート・エクイティのセカンダリー市場

ジェフ・ハマー
セカンダリー投資チーム  グローバル共同ヘッド

ポール・ サナブリア
セカンダリー投資チーム グローバル共同ヘッド

いかなる市場についても、買う気がある買い手が売る気がある売り手を見つけられるか否かが健全性の尺度です。それが今日のセカンダリー市場で起きており、かつ他の資本市場とは対照的な規模で起きています。

主なポイント

  • セカンダリー市場は今日、流動性が得られる数少ない市場の一つです。
  • 流動性を供給するセカンダリー投資家は、強い需要から恩恵を受けられます。
  • 豊富な買い機会:伝統的なリミテッド・パートナー(LP)主導型の案件では純資産価値に対する魅力的なディスカウントが得られ、ゼネラル・パートナー(GP)主導型の案件では、かつてないほど良好なディールフローが見られます。

広く開かれたプライベート・エクイティのセカンダリー市場

私たちは、大いなる不確実性の時代に足を踏み入れています。インフレ率は低下するでしょうか?金利はどこまで上昇するでしょうか?本格的な銀行危機に陥るリスクは何でしょうか?米国政府は債務不履行になるでしょうか?次のリセッションは近づいているのでしょうか?その場合、どれほど深刻なものになる可能性が高いでしょうか?答えは分かりませんが、これらの疑問が全ての市場のほぼ全てのセクターにわたり活動を停滞させていることは確かです。

ただ、プライベート・エクイティのセカンダリー市場では異なります。2021年に1,320億米ドル、2022年に1,080億米ドルと過去最大級の年間取引高を2度経験した1セカンダリー市場は今日、渇望される流動性が得られる数少ない市場の一つです 。

トップダウンの観点から、取引高は2023年も再び1,000億米ドルを超えると見込まれます。ボトムアップの観点から見ると、市場に持ち込まれる取引件数2は、私たちのセカンダリー市場参加者として25年の経験上、過去最高です。不透明なマクロ経済環境下(恐らくその影響も一部にあると考えられますが)、セカンダリー市場は門戸を開いています。

プライベート・エクイティのセカンダリー市場の年間取引高は引き続き高水準
世界全体のセカンダリー市場取引高

出所:エバーコア、ジェフリーズ、ピッチブック、2022年12月31日

流動性に対する需要の状況は、今資本を投下するセカンダリー投資家に有利

セカンダリー市場は、なぜこれほど活発なのでしょうか。一言で言えば、流動性に対する需要のためです。上場株式の下落を受けて機関投資家のプライベート・エクイティへの資産配分割合が一夜にして過剰になったことによるデノミネーター(分母)効果3が、売り手を伝統的なLP主導型セカンダリー市場に向かわせています。継続的な資産配分のリバランスを受けて、LP主導型案件が突出して増加しています。

GP主導型セカンダリー市場では、スポンサーの熱意の高まりやセカンダリー取引に特化した投資銀行の増加に加え、新規株式公開(IPO)や合併・買収(M&A)といった他のエグジット手段が流動性を確保する選択肢として取りづらくなっていることから、案件数が毎月増え続けています。現時点では、従来型の流動性確保の手段が頼りにならないため、プライベート・エクイティ(PE)業界は、これまで以上にセカンダリー投資家を必要としています。

セカンダリー投資家は他のPEエグジット手段の不調から恩恵を受ける
米国プライベート・エクイティの四半期別エグジット活動

出所:ピッチブック、2023年3月31日
今日、セカンダリー投資家にはより強い交渉力があります

その結果、今日、セカンダリー投資家にはより強い交渉力があります。支払いを繰り延べ目標内部収益率(IRR)が引き上げられる場合や、セカンダリー投資家がポートフォリオをカスタマイズし、価格を決めるよう求められる場合もあります。要するに、今はセカンダリー投資家が資本を投下する好機です。

ディスカウント幅の拡大、ディールフローの増加、大型案件から中型案件への遷移

LP主導型案件の市場は、一般的にプライベート・エクイティへの資産配分または特定の戦略や運用会社への配分を構築しようとしている投資家にとって、魅力的な買い機会となっています。価格は純資産価値を大きく下回っており、ディスカウント幅はセクター、戦略、運用会社によって異なります。売却する必要があるLPは、売れるものを売っており、今最も売り易いのは「クオリティ」です。今日の市場において、クオリティの高いバイアウト・ポートフォリオが魅力的なディスカウントで購入できますが、最も有利なマージンを獲得するには、セカンダリー市場に特化した運用会社ならではのストラクチャリングのスキルと情報へのアクセスが必要です。

同様に、GP主導型案件の価格は、投資家により有利な条件に加えて、取得時のマルチプルが改善されたことで大きく好転しています。セカンダリー投資家は、コンティニュエーション・ビークルに移管される集中ポジションに対してより大きな譲歩を求めています。GP主導型案件も伝統的な資産構成の変化を経験しています。現在、10億米ドルのシングルアセット・コンティニュエーション・ビークルは減少し、5億米ドル未満のマルチアセット・コンティニュエーション・ビークルが増えています。ラージキャップのスポンサーによる独占はもはやなく、ミドルマーケットやロウアー・ミドルマーケットのスポンサーがセカンダリー市場の案件数のシェアを拡大しています。GP主導型案件の市場では、かつてないほど良好なディールフローが見られますが、投資家が専門リソースを持たずにそのディールフローに参加することもますます困難になっています。今はこれまで以上に、セカンダリー投資の成功には、積極的なオリジネーション戦略、洗練された交渉、優れたアンダーライティングスキルを必要とします。

セカンダリー市場ほど創造性、イノベーション、柔軟性を備えた市場は他にありません

全ての流動性提供者に向けて:現在の好機を捉えよ

いかなる市場についても、買う気のある買い手が売る気のある売り手を見つけられるか否かが健全性の尺度です。それが今日のセカンダリー市場で実際に起きており、かつ他の資本市場とは対照的な規模で起きています。セカンダリー市場の着実なディールフローが、引き続きプライベート・エクイティ業界に流入しており、セカンダリー取引案件は、安定的に成立しています。

それは驚くべき結果ではありません。セカンダリー市場は、多くの場合、特定のニーズに応じてカスタマイズすることができる、ソリューション志向の流動性を提供する資本市場とみなされています。セカンダリー市場ほど創造性、イノベーション、柔軟性を備えた市場は他になく、この重要な特性によって、セカンダリー市場は不確実性の時代に優れた機能を発揮することができます。サイクルの上下を乗り越えたセカンダリー市場の強靭性は、リスク削減を図る投資家にとって安心材料となり、ドライパウダー(待機資金)を投下する魅力的なエントリーポイントとなります。

では、成功には何が必要でしょうか。専門知識と優れた案件を成立させる技術的なセンスが必要だと見ています。加えて、プライマリー投資、共同投資、ダイレクトレンディングの視点を含む、様々な角度からスポンサーの活動を捉える情報の優位性が必要です。最も重要かつ成功するセカンダリー投資家、特にGP主導型セカンダリー投資家は、相互の利益が一致する案件において、熟練したスポンサーが付いているクオリティの高い資産を求めるということです。

今はまさに、セカンダリー投資家が一世代ぶりに目にする投資機会です。数年にわたる金融緩和とプライマリー市場におけるコミットメントの記録的な伸びを受け、流動性に対するニーズが高まっています。流動性に対する需要が積み上がり、従来のエグジット活動を通じた流動性の供給が減少している中で、何を探るべきか、それをどこで見つけるべきか、そしてそれをどのように自らに有利な条件で確保できるかを熟知しているセカンダリー投資家にとって、現在の市場動向は過小資本の市場に流動性を供給する機会を提示しています。しかし、そうした買い手の相対的な優位性を活用する機会は、永久に開かれているものではありません。セカンダリー投資家は、この好機を逃してはなりません。

 

  1.  ピッチブック、2022年12月31日
  2. https://pitchbook.com/news/articles/secondaries-2023-PE
  3. https://www.nasdaq.com/articles/denominator-effect-public-markets-volatility-fundraising

リスクと手数料については、以下をご覧ください。https://www.manulifeim.com/institutional/jp/ja/jp-risks-and-fees-guide

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世界的なパンデミックなどの公衆衛生危機は、市場のボラティリティの大幅な上昇、証券取引の停止等の原因となり、ポートフォリオのパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があります。例えば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界の経済活動に深刻な打撃を与えています。将来、発生する可能性のある公衆衛生危機、およびその他のエピデミックやパンデミックは、現時点では必ずしも予測可能ではない影響をグローバル経済に与える可能性があります。公衆衛生危機は、既存の政治的、社会的、経済的リスクを悪化させる恐れがあります。こうした事象はポートフォリオのパフォーマンスに悪影響を与え、投資に損失が生じる可能性があります。

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